リフト

病院が守るべき安全は大きく分けて2つあります。
1つは当たり前ですが「患者様の安全」、もう1つは「職員の安全」です。

 

 

患者様の安全について

 介護中の事故で多く報告されているのは「皮膚剥離・内出血」「転倒・転落」です。これらは、移乗や移動の介助中に発生することが多く、死亡事故にもつながる可能性が高いため、どの病院・施設でも重要な取り組みになっています。当院では、福祉機器の積極的な使用を推進しています。自分で立ち上がることができない人を「ヨイショ!!」と抱えあげることは、介助する側だけでなく、本人にとっても苦痛にもなります。移乗は「人の体が移動すること」ではなく、「コミュニケーションを取りながら、次の生活行為への意欲を高めるプロセス」です。お互いが必死になって(顔を歪めながら)介助する時代ではありません。リフトが創り出す「笑顔のある、落ち着いた介護の風景」を覗いてみませんか?

 

職員の安全について

 

 病院を含む保健衛生業は、業務中の腰痛発生が多く、それが原因で休業に至ることが多い業種といわれています(平成28年業務上疾病発生状況 厚生労働省より)。19年ぶりに改訂された「腰痛予防対策指針(2013年)」をご存じですか?指針には「全介助が必要な対象者にはリフト等の積極的使用をすすめる」こと、「人力による人の抱え上げを行わせない」こと、「対象者の残存機能と介助への協力度を踏まえて、福祉用具を導入する」ことなどが記載されております。ある研究では、全介助が必要な対象者を人力で移乗する場合、どのような技術(テクニック)を用いても、腰にかかる負担を安全レベルにまで軽減することはできないといわれています。つまり、人力のみで移乗することには無理があるのです。当院ではリフトだけでなくトランスファーボードやスライディングシートなどの利用を標準的な介護技術としています。新入職時には時間をかけて使用方法を指導し(写真は2018年度新入職員研修会の一場面です)、介助に関わるすべての職員がリフトなどを使用できる技術を習得しています。その結果、過去10年以上に渡って業務中の腰痛発生による休業(労働災害)は報告されておりません。抱えあげない介護に取り組む「職員のからだにやさしい医療」の現場を体験してみませんか?「抱えあげない介護」技術を、仕事を通じて習得しませんか?

おまけ
当院では職員が、労災に関係なく利用できる病気入院補償制度や24時間電話相談などの福利厚生サービスに加入しており、「患者様の安全を守るためには、職員の健康が大事」と考えております。1年間の実績として、6名がこの制度を利用し、総額約140万円の支援が行われました。電話相談も多くの職員が利用しているようです。

リフトの使用手順(床走行式リフト)

 

リハビリ室でのリフトの活用

 理学療法士や作業療法士は、業務の中で患者様の日常生活動作獲得を担うため、実は腰痛持ちが多いと言われています。重度障害者の歩行練習は充分な安全確保が不可欠ですが、そのために理学療法士が無理な姿勢をとってしまい腰痛を引き起こすこともあります。当院では、天井走行式歩行練習リフト(左写真)や免荷式トレッドミル(右写真)などの機器を配備しています。患者様が転倒しない環境を作ると同時に、職員の腰痛防止に努めています。興味のある方はリハビリテーションのページにお立ち寄り下さい。

  

ケース(1)つまずきによる転倒の回避

ケース(2)重度半側空間無視症例の歩行練習

ケース(3)(介入前)転倒回避の学習

ケース(3)(介入後)転倒回避の学習